診療部の活動

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2022年5月27日抄読会

Daratumumab-Based Treatment for Immunoglobulin Light-Chain Amyloidosis
N Engl J Med. 2021 Jul 1;385(1):46-58.

2022年5月20日抄読会

Health-Related Quality of Life in Transplant-Ineligible Patients With Newly Diagnosed Multiple Myeloma: Findings From the Phase III MAIA Trial
J Clin Oncol. 2021 Jan 20;39(3):227-237.

2022年5月6日抄読会

Distinguishing Multisystem Inflammatory Syndrome in Children From COVID-19, Kawasaki Disease and Toxic Shock Syndrome
Pediatr Infect Dis J. 2022 Apr 1;41(4):315-323.

2022年4月26日抄読会

Empagliflozin, Health Status, and Quality of Life in Patients With Heart Failure and Preserved Ejection Fraction: The EMPEROR-Preserved Trial
Circulation. 2022 Jan 18;145(3):184-193.
心不全(HF)の全患者の約半数が駆出率を維持している患者(HFpEF)である。HFpEFの患者は、駆出率が低下したHFの患者と比較して、同様の有害な臨床転帰のリスクを経験するだけでなく、両方のHF表現型も経験する。同様に身体機能と健康関連の生活の質(HRQoL)が損なわれています。障害のあるHRQoLの全体的な負担は、駆出率が低下したHFとHFpEFの両方で類似していますが、HFの健康状態に関連するデータのほとんどは排出率が低下したHF患者に由来します。皇帝保存試験(駆出率が保存された慢性心不全患者を対象としたエンパグリフロジン転帰試験)は、HFpEFおよび左心室駆出率が40%を超える患者を対象に、ナトリウムグルコース共輸送体2阻害剤エンパグリフロジンを研究し、リスクの有意な低下を示しました。EMPEROR-Preserved試験におけるHRQoLを含む患者全体の健康状態は、カンザスシティ心筋症質問票(KCCQ)で評価され、エンパグリフロジンの臨床的利益に対するベースラインHRQoLの影響を理解する機会を提供しました。逆に、HRQoLに対するエンパグリフロジンの効果。

2022年4月22日抄読会

Comparative Effectiveness of Single vs Repeated Rapid SARS-CoV-2 Antigen Testing Among Asymptomatic Individuals in a Workplace Setting
JAMA Netw Open. 2022 Mar 1;5(3):e223073.
SARS-CoV-2の診断テストのゴールドスタンダードは、定量RT-qPCRであるが、そ結果を得るには時間がかかり、SARS-CoV-2の迅速抗原検査はスクリーニングに頻繁に使用されている。米国ではFDAによる緊急使用許可を取得したSARS-CoV-2迅速抗原検査が利用可能である。しかし無症候性の患者に対して迅速抗原検査は感度および特異性が低いと批評されており、その有用性はまだ認知されていない。ニューヨーク市に拠点を置くサービス会社の大規模なコホートを利用して、単回および反復の迅速抗原検査を使用した従業員スクリーニングプログラムの精度と症候のない個人のRT-PCRスクリーニングの精度とを比較した。
対象 合計179,127人の参加者がテストを受けた。年齢の中央値は36歳(範囲、18〜65歳)、58%が男性、36%が女性、性別は不明6%だった。
2020年11月から2021年10月までの期間に合計179,127の迅速SARS-CoV-2抗原検査が実施され、陽性率は0.35%(抗原検査結果623陽性)。RT-qPCRで確認すると陽性の623件は、238件(38%)が真陽性であり、385件(62%)が偽陽性だった。623の件のうち、569件に2回目の抗原検査を行った。二回の検査を行った224例うち、207(92%)例でRT-qPCRで陽性が確認された。一回目の抗原テストが陽性であり、2回目の抗原テストが陰性だった345例のRT-PCRの結果で328例(95%)はマイナスだった。2回目の抗原検査の全体的な精度は94%と推定された。今回の結果は1回の抗原検査を2回にすることで正確性が38%から92%に向上することを示し、抗原検査を実用するうえで2回繰り返すことが重要であることを示唆している。その一方で今データは陽性率が高い集団では高い精度を示す側面も示唆していた。

2022年4月15日

A multicenter, open-label, single-arm study of anamorelin (ONO-7643) in advanced gastrointestinal cancer patients with cancer cachexia
Cancer. 2019 Dec 1;125(23):4294-4302.
(成長ホルモン(GH)分泌促進作用をもつ物質は 1970 年代からつぎつぎと発見・合成され、GH 分泌促進因子(GHS)とよばれていた。GHS は 7 回膜貫通型の G 蛋白共役型受容体である GHS 受容体を介して作用し、GHS 受容体は 1996 年にクローニングされた。GHS 受容体は下垂体や視床下部などの中枢神経系を含め、全身の組織に広く発現している。GHS 受容体の内在性リガンドは 1999 年に胃から単離・同定され、グレリンと命名されGHS 受容体はグレリン受容体とよばれる。<医学のあゆみ Volume 233, Issue 9, 725 – 729 (2010)>)
がんによる悪液質は体重減少を特徴とし、がん患者の罹患率と死亡率の増加に関連している。 アナモレリン(ONO-7643; ANAM)は、食欲低下、除脂肪体重(LBM)減少、体重減少を改善する新規の選択的グレリン受容体アゴニストである。
この多施設非盲検シングルアーム試験では、進行性および切除不能な消化管がんの日本人患者50人を対象に100mgのANAMの有効性と安全性を調査した。 ANAMは12週間にわたって1日1回投与された。 主要評価項目は、試験期間中にLBMを維持または獲得した患者の割合だった。そして、LBM、体重、QoL、および栄養状態のバイオマーカー、これらの変化を副次的評価項目とした。
治療に反応した患者の割合は63.3%(95%CI、48.3%-76.6%)であり、ベースラインからのの変化はLBMは1.89±0.36kg、体重の最小二乗平均は1.41±0.61kgだった。QoLに関して食欲関連の質問では、ANAMが食欲を改善したことを示した。 有害事象は患者の79.6%で発生し、最も一般的な有害事象は、γ-グルタミルトランスペプチダーゼの増加(8.2%)、糖尿病(6.1%)、高血糖(6.1%)、およびQRSの延長(6.1%)だった。
ANAMは食欲不振と患者の栄養状態を改善し、がん悪液質の患者のLBMの増加と体重の増加をもたらした。12週間にわたるANAM治療は患者に耐えられるものであり、進行性消化器がんの患者に有益な選択肢と考えられる。

2022年4月8日抄読会

Ixazomib as Postinduction Maintenance for Patients With Newly Diagnosed Multiple Myeloma Not Undergoing Autologous Stem Cell Transplantation: The Phase III TOURMALINE-MM4 Trial
J Clin Oncol. 2020 Dec 1;38(34):4030-4041
【目的】
経口プロテアーゼ阻害剤を骨髄腫の維持療法は自家造血幹細胞移植を受けていないNDMM(無治療の骨髄腫患者)のPFSを改善しうるのかという疑問に答えることがこのスタディの目的だった。毎週ixazomibで治療を行うことにより、再発・難治性多発性骨髄腫(MM)への上乗せや、新規診断MMでの移植後維持療法において有効性を示している。ギリシアNational and Kapodistrian University of AthensのDimopoulosらは、標準的な導入療法から6-12ヵ月後に奏効を達成し、自家造血幹細胞移植を受けていない新規診断MM患者を、イキサゾミブまたはプラセボに3:2で割り付ける第3相ランダム化比較試験TOURMALINE-MM4を実施した(n=706)。
【結論】
無増悪生存期間の中央値は、イキサゾミブ群17.4ヵ月、プラセボ群9.4ヵ月であった(ハザード比0.659)。イキサゾミブは、導入療法後に完全奏効または最良部分奏効を達成した患者で最も有効であった(25.6ヵ月 vs. 12.9ヵ月、ハザード比0.586)。グレード3以上の治療下発現有害事象はイキサゾミブ群の36.6%、プラセボ群の23.2%で認められ、それぞれ12.9%、8.0%が治療中止に至った。
【評価】
TOURMALINE-MM3試験での移植後維持療法に続いて(https://doi.org/10.1016/S0140-6736(18)33003-4)、移植が不適格な患者の維持療法においても再発抑制効果を示し、現在承認されている。

2022年3月25日抄読会

High-Flow Oxygen with Capping or Suctioning for Tracheostomy Decannulation
N Engl J Med. 2020 Sep 10;383(11):1009-1017.
人工呼吸器を装着された患者の15%において気管切開が行われている。だが十分抜管できると判断するための実験的なデータは不十分である。抜管の適応を示すエビデンスは限られており、それは専門家の意見、2-3の調査、そして1施設の経験や検証不十分なままの抜管可能予測スコア、組織的な研究でも集中治療専門医による気管切開チームのランダマイズスタディと、嚥下障害や睡眠の質を改善する効果に関する無作為試験によるものだけであった。気管切開を伴う重症患者の気管チューブを抜管できるかを決定するために多く用いられるテストはキャッピングテストである。キャップを気管チューブの上において、バルーンの周囲からの漏れや、開窓あるいは口や鼻を通して患者が呼吸をするか観察する。プロトコール化されたキャッピングテストは高い特異性をもち抜管成功を予測できる抜管の準備基準をリードしきた。しかし安全性を重視する性質から、すでに抜管可能な患者であるのに基準に合わないという理由で抜管が遅れてしまうことがある。抜管の準備ができているかどうかを評価する別のアプローチは、一定期間に分泌物が患者の気道から吸引される回数を測定することである。吸引のエピソードが少ないことは、抜管が成功する可能性のある肯定的な指標と見なされる。このREDECAP試験で、我々は気道吸引の頻度とキャッピング法とによる抜管の準備の評価を比較した。すべての患者は気管切開チューブを通してハイフロー療法を受けていた。
5つの集中治療室(ICU)にて気管切開チューブによる酸素療養中の意識のある重症患者を登録した。人工呼吸器からウイニング、離脱した後の患者を対象とした。この非盲検試験では、患者は、24時間のキャッピング試験と断続的なハイフロー療法(対照群)を受けるている患者(対照グループ)、ハイフロー療法を受けていてこれから吸引の頻度で抜管の準備ができているかを試験する(介入グループ)にランダムに割り当てた。ログランク検定によって比較した、抜管までの時間をもっとも重要な結果とした。二次的目的は入院中の抜管不全、離脱不全、呼吸器感染、敗血症、多臓器不全、ICUと病院での滞在期間および死亡とした。
対象には330人の患者が含まれ、患者の平均(±SD)年齢は58.3±15.1歳であり、68.2%は男性だった。合計161人の患者が対照群に、169人が介入群に割り当てられた。 抜管までの時間は、介入群の方が対照群よりも短かった(中央値、6日[四分位範囲、5〜7]対13日[四分位範囲、11〜14]であるabsolute defferenceは7日だった。介入群では、対照群よりも肺炎と気管気管支炎の発生率が低く、入院期間も短かった。 他の二次的結果は2つの群で類似していた。
吸引頻度による抜管基準はキャッピング試験よりも抜管までの時間が短縮され、抜管失敗の発生率はグループ間に差はなかった。

2022年3月22日

症例検討会 1例
1 喘鳴で受診した身元不明者。氏名・生年月日不詳。意思表示不可能だった。うっ血性心不全の治療後全身の強直と摂食不能が顕在化した。L-DOPAが無効でジアゼパムが著効したことなどより全身性ジストニアと診断した。服薬経路として胃ろう造設を考案したが、家族等がいないこと、本人の意思確認が不可能なことから入院病棟と病院倫理委員会と複数の話し合いの機会を設けてACPを実施した。これまで長く入所していた施設Jの職員と話し合い胃ろう造設等を結論することが望ましいと結論され、本人、施設J、入院病床スタッフの合同会議の結果胃ろうを造設することになった。

2022年3月15日

症例検討会 2例
1 70歳代男性 嘔吐腹痛で受診。入院後酸化マグネシウム処方し排便後腹痛改善した。慢性便秘患者の食事療法につき検討した。

2 x-20年(50歳代)に血小板減少を訴えMDS(RCMB)と診断されていた。X-2年WBCが3000まで減少し、慎重に経過観察。X年 血小板減少と骨髄芽球が血液中に出現し急性骨髄性白血病と診断された。CAG療法を実施してCRに至った。

2022年2月18日抄読会

SARS-CoV-2 T Cell Responses Elicited by COVID-19 Vaccines or Infection Are Expected to Remain Robust against Omicron

Viruses. 2022 Jan 2;14(1):79

オミクロン株はスパイクタンパクに変異を起こし、中和抗体からエスケープすることが知られています。
しかしながら、細胞性免疫もエスケープするかどうかは不明でした。
本研究では、オミクロン株は従来の新型コロナウイルス
(α、β、γ、δ)に比べエピトープを減少させることを明らかにしました。

また、オミクロン株がT細胞のHLAにバインドすることを本研究では明らかにしました。すなわちオミクロン株がキラーT細胞に攻撃されることが示唆されました。
さらに、インターフェロンγ細胞数を指標にした試験から、感染の重症化を防ぐためにT細胞が重要であることが示唆されました。

2022年3月4日抄読会

Molnupiravir for Oral Treatment of Covid-19 in Nonhospitalized Patients
N Engl J Med. 2022 Feb 10;386(6):509-520. doi: 10.1056/NEJMoa2116044.
COVID-19はSARS-CoV-2の感染で発症し、すでに270,000,000件の感染と5,200,000人の死亡が報告されている。高齢の感染者と基礎疾患のある感染者は入院治療となる比率が高い。数種類のワクチンが入院と死亡のリスクを減らす効果を有することがすでに公にされているが、それだけで十分とは言えないことも事実でありウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬が求められている。発症したらできるだけ早く治療を始めることが理想的である。モルヌピラビルはリボヌクレオシド(Nヒドロキシシチジン NHC)の前駆体でSARS-CoV-2をはじめとするRNAウイルスに対して抗ウイルス効果があり、ウイルスの耐性獲得を阻止する能力もある。モルヌピラビルを内服すると体内を循環し細胞内でリン酸化されてNHC三リン酸となる。NHC三リン酸はRNAポリメラーゼにより増幅ウイルスのRNAに組み込まれ、グアノシンあるいはアデノシンを誤って組み込ませる。それによりウイルスゲノムの欠失エラーが蓄積しウイルスは感染性と複製能力を失う。この薬は1,2相試験をすでに終えており、第2相試験の結果より800mgという用量が選ばれ、第3相試験MOVe-OUT試験が計画された。MOVe-OUT試験は重症化リスクのある、入院を必要とせぬ状態のCOVID-19の症状を呈しているが5日を経過していない成人を対象とした。これはその報告である。
モルヌピラビルの安全性と効果を評価するためdouble-blind、プラセボを用いたRCTを行った。対象は条件(COVID-19と検査で診断された人、発症から5日を経過していない人、ワクチン接種歴がない人、一つ以上重症化因子を持っている人、入院していない人)すべてを満足した成人だった。透析中、GFRが30未満、妊娠中の参加者は除外した。介入はモルヌピラビルあるいは偽薬を800mg1日2回5日間内服すること。最重要目標(効果)は入院の有無と29病日における死亡を評価すること、有害事象の発生率を評価することを安全性に関する重要目標とした。1550名の参加者の50%が29日を経過したとき(2021年9月10日に到達)に中間解析を行う計画だった。
[参加者] 775名が参加(15か国78部所)の段階で予定中間解析を行い、最終解析では1443名が参加(20か国107部所)になっていた。[効果] 入院あるいは死亡の転帰はモルヌピラビル群7.3%、プラセボ14.1%。すべての参加者の解析でも、入院または死亡した割合は、プラセボ群よりもモルヌピラビル群の方が低かった。モルヌピラビル群で1人の死亡が報告され、プラセボ群で9人が報告された。[安全性] 有害事象は、モルヌピラビル群の参加者710人中216人(30.4%)、プラセボ群の701人中231人(33.0%)で報告された。

2022年2月22日

症例検討会 1例
40代女性 血小板数減にて紹介 1M前季肋部痛と発熱で近医を受診。原因不明の感障害を指摘された。血小板数が9万/uLから4万/uLに減少し当院に紹介された。抗核抗体弱陽性、CMV、EBVは既感染。血液細胞鏡検でBlast+。骨髄検査でALLと診断された。

2022年2月18日CPC

CPC 2022.2.18
患者70歳台 男性
【主訴】 倦怠感・両下腿腫脹
【既往歴】 , 胃潰瘍手術全摘(29歳) 気胸 (60 歳頃) 高血圧症・高脂質血症(不明)
【生活歴】 喫煙 : 15 本/日×53年 アルコール:なし
【定期内服薬】 ノルバスク錠5mg リバロ錠 1mg
【現病歴】 X年3月、両下腿腫脹を自覚するようになり、長く歩くと左下腿に疼痛が出現す るようになった。 かかりつけ K医院で RF 陽性を指摘され、4/5、G クリニックを紹介受診した。RA として 4/13 よりリウマトレックスを開始した(火曜 4mg、水曜 2mg)。 5/1 悪寒と 38.4°Cの発熱が出現し、それ以降は具合が悪く休んでいた。5/10 再 診し、LDH の著増、AST と CRP の増加を認めた。 5/11 倦怠感と脱力が増強し、肝不全として当院を紹介受診し入院となった。
【入院時現症】 身長164cm,体重53 kg. 体温 35.7°C. 呼吸 24分, 整.脈拍 65分,整. 血圧127/74 mmHg. 意識清明, 眼瞼結膜に貧血なし,眼球結膜に黄疸なし. 心肺異常なし、腹部は平坦,軟,脾臓腫大あり、下肢浮腫なし.
【入院時検査所見】

【入院後経過】 発熱と肝機能障害、CRP・LDH・CPK の上昇から、胆道感染および横紋筋融解と暫定診断し、補液と抗生剤で経過をみた。 5/17 に CPK は正常化したが、LDH は 838 と高値で、その後 38°C~40°Cの発熱が 持続し CRP は 4~13 で推移した。 脾腫については、肝炎に伴う二次性の脾腫の可能性も考えたが各種ウイルスマ ーカー・抗核抗体・抗ミトコンドリアは陰性で、ウイルス性肝炎や自己免疫性肝 炎の可能性は否定的であった。 5/19 血液疾患の可能性も考え骨髄穿刺を施行したが、軽度の線維化のみで異常 細胞は見られなかった。表面マーカーでは B/T cell の偏位はなく JAK2 V617F 変異は陰性で、リンパ腫骨髄浸潤・骨髄線維症は否定的であった。 5/31、PET 検査で脾臓と左腋窩リンパ節に高度の集積を認めた。さらには発熱、 脾腫、LDH上昇があることから脾臓原発のリンパ腫が疑われた。 6/3外科コンサルを行い、6/14 外科転科・6/16 脾臓摘出の予定となった。 . 6/4 可溶性 IL-2 レセプター値は 9813 U/ml と異常高値を認め、これもリンパ腫を示 唆する所見であった。 6/10 夕方より悪心、夜より左側腹部痛を認めた。鎮痛剤を使用したが疼痛は持 続した。6/11 朝 8時過ぎ心肺停止状態で緊急コールされ、CPR にていったん心 拍再開したが、再度 PEA ~asystole となり午前 11 時死亡診断された。 6/4 に 9.0 あった Hb 値は、6/11 の 08:12 には 2.4、08:54 には 1.3 まで著しく 低下していた。正球性貧血で、直接クームス試験を施工したが陽性ではなく、急 性出血による貧血が疑われた。 ご家族が病理解剖に同意され、同日 15 時より主治医立ち会いのもと病理医と外科北原先生により剖検を施行した。 臨床的には、死因は出血性ショックであると考えた。

【考察】 脾破裂 非外傷性脾破裂は希である。近年、世界的に脾破裂は613 例報告されているが、 そのうち84例が血液悪性腫瘍に続発するものであった)。 本症例における死因は病理学的にも脾破裂による出血性ショックと考えられるのか、また、悪性リンパ腫の腺浸潤が脾破裂の原因となったのか、御教示を願い ます。その他の臓器への浸潤の有無に関しても、よろしくお願いいたします。
LDH・CRP 高値に関して #LDH 本症例では LDH が異常高値を示していたが、LDH は 1~5のアイソザイムが同定されている。その中でも LDH2 と LDH3 がリンパ腫において高値を示すことが知 られているが 2、本症例においても LDH2 と LDH3 が特異的に高値を示しており、 LDH 異常高値はリンパ腫を示唆するものであった。 #CRP CRP は細菌感染症などで高値を示すことが知られているが、リンパ腫においても高値を示すことが知られており、抗生剤を投与しても CRP の低下が見られなかったことから、本症例におけるCRP 高値はリンパ腫に合致すると考えられる。
CPK 高値と左下肢の腫脹や疼痛の原因について #皮膚筋炎 本症例では初め左下腿の腫脹と疼痛を訴え、さらには CPK が異常高値を示して おり皮膚筋炎が疑われた。しかし自己抗体は陰性で、無治療で自然軽快したことから否定的である。
左給腸骨動閉塞 そして造影 CT を行った結果、左総腸骨動脈に閉塞が確認され、左下肢の虚血で 横紋筋融解が起こり CPK 高値や症状が出現し、側副血行路ができて改善した可能性を考えた。
左総腸骨動脈閉塞の原因の鑑別 #ASO 左総腸骨動脈の閉塞の原因として、様々な鑑別が挙げられるが、画像所見上、腹 部大動脈からの動脈硬化が示唆され、また高脂血症や高血圧症および喫煙歴が あることから、ASO により閉塞が生じた可能性が考えられる。 #AF 心電図上 AF は見られず、AFによる血栓の可能性は否定的である #IVLBCL : Intravascular large B-cell lymphoma リンパ腫細胞が血管内に浸潤して閉塞した可能性も考えられる。血管内に浸潤 するリンパ腫として IVLBCL(DLBCL の亜型)が知られている。しかし同部位に PET で集積が確認できなかったことから確定できない。
IVIBCL の代表的症状や検査値に合致
#fever ○
#night sweats ○
#fatigue ○
#respiratory ○
#spleen ○
#liver ○
#Hb<110g/L ○ #P1t<100×10°/L ○ #WBC<4.0×10°/L × #A1b<36g/L 0 2 #Elevated LDH ○ #sIL-2R(>5000U/ml) ○
本症例で出現した症状や検査値は、IVLBCL の代表的症状や検査値に合致した。
WBC 数は 4.0 × 10/L を下回ることはなかったが、それでも 4.1 × 10°/L とやや低値であった。 IVLBCL においては、特に LDH 値と sIL-2R 値の上昇が高頻度で認められる 5)。本 症例でも LDH 値と sIL-2R 値は顕著に上昇していた。sIL-2R 値は9813U/mlと著明に上昇していた。 また IVLBCL においては脾臓浸潤が 67~81%の頻度で生じることが知られている。以上、本症例で出現した症状や検査値は IVLBCL で高頻度に認められるものであ り、IVLBCL である可能性も考えられる。
脾梗塞に関して 画像所見から本症例では脾梗塞が生じていたと考えられる。すなわち脾動脈の 分枝が閉塞していたと考えられる。リンパ腫細胞が血管内に浸潤して動脈閉塞 が生じた可能性も考えられる。

2022年2月1日

症例検討会 1例
成人女性 浮腫を主訴に受診 既往歴 糖尿病 体重増加~10kg主訴にx-60日当院受診。UCG、ECG、x-p及び血液検査で心源性の浮腫除外され、トラセミド処方された。x日下肢から浸出液漏出すること、体重~30kg増加を主訴に再受診。CTで皮下に水分を認めた。尿中アルブミン少量、血清コレステロール正常、血清アルブミン正常、UCG、ECG変化なし。薬剤性浮腫除外のためエクア、クロナゼパム、トラセミド他内服薬をすべて中止。x+20日体重30kg減少し下肢の浮腫消失した。これらより薬剤性浮腫と考えている。


ひだり x日、みぎx-60日

2022年1月25日

症例検討会 2例
1 成人男性 出血傾向で紹介。血小板1000/μL、下肢点状出血。両上肢に紫斑あり。骨髄巨核球正常数、血小板産生像なし。ITPと診断しステロイドパルス、γグロブリン療法実施した。吐下血、視野障害を訴えた。
頭部CTで脳出血を認めた。
2 1月11日2例目 Hamテスト、シュガーウォーターテストいずれも陰性。

2022年1月18日

症例検討会 2例
1 成人女性 -8月同居の兄弟が肺結核と診断された。-4月CTで肺に異常陰影指摘されてー3月肺胞洗浄液で抗酸菌検出しPCRで結核菌DNA陽性。
2 成人男性 -2か月摂食障害で近医を受診しCRP高値を指摘されて受診。喀痰で抗酸菌検出しPCRで結核菌DNA陰性、非結核性抗酸菌陽性にてMACが明らかになった。

2022年1月14日抄読会

Evaluation of the BNT162b2 Covid-19 Vaccine in Children 5 to 11 Years of Age
The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE 386 1 JANUARY6,2022

PFIZER製ワクチンは2020年12月にFDAから16歳以上を対象に緊急使用許可を出し、現在は12~15歳まで拡大している。
この研究では12歳未満の子供におけるmRNAワクチンによるSARS-CoV-2感染に対する免疫について説明し、この集団におけるCovid19ワクチンの安全性、免疫原生および有効性を示した。
この研究の限界としては長期的なフォローアップの欠如が挙げられるが、この調査からの長期的なフォローアップは2年間継続される。
さらに5~11歳の拡大コホートが評価されており、追加の安全性評価が進行中である。

2022年1月11日

症例検討会 2例
1 成人男性 ひだり臀部の疼痛とひだり下肢の疼痛で受診。CTでひだり骨盤に腫瘤とひだり座骨破壊。同部位に針生検実施。濾胞性リンパ腫と診断された。腫瘤はFDGPET検査でSUVmax 19.7。
2 女性 脾腫と黄疸 父脾摘歴あり。 クームス検査陰性。 HS疑い。

2022年1月7日抄読会

Protection against Covid-19 by BNT162b2 Booster across Age Groups
N Engl J Med. 2021 Dec 23;385(26):2421-2430
ブースター投与により感染確定率、重症化率はほぼ同じ比率で減少していた。
今回の結果はBNT162b2のフェーズ2-3の試験結果と一致していた。
リスク回避行動や併存疾患のバイアスはまだある。ブースター接種後に試験の参加者が行動変容を示した、PCR検査の受検行動が変わった(こともこれらのバイアスになりうる)。
投与後の行動によるバイアスをなくすため接種後群と接種直後群の比較を行った。
今夏合いの地位の感染者数をもとにリスクを算定した。