診療部の活動

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2021年12月24日抄読会

Dupilumab in Children with Uncontrolled Moderate-to-Severe Asthma
N Engl J Med. 2021 Dec 9;385(24):2230-2240.
中等度から重度の喘息の子供は、標準治療を受けているにもかかわらず、喘息の合併症で苦しんでいる。DupilumabはIL-4受容体のαサブユニットをブロックする完全にヒト型のモノクロナル抗体である。そしてこのモノクロナル抗体はIL-4とIL-13によるシグナルを遮断する。青年/成年にtype2の炎症性疾患(アトピー性皮膚炎、鼻腔ポリポーシスによる慢性副鼻腔炎)と同様に喘息の治療薬として承認済みである。複数の国による二重盲検、無作為割付による第3相試験(Liberty Asthma VOYAGE)を計画して、6-11歳の中等度から重度の喘息の子供たちにDupilumabの効果と安全性を調べた。
52週間の第3相ランダム化二重盲検プラセボ対照試験、対象 6歳から11歳までのコントロールされていない中等度から重度の喘息患者408人。介入 2週間ごとにDupilumabまたはプラセボの皮下注射(体重が30kg以下の場合は100mg、体重が30kgを超える場合は200mg)を割り当てた。比較はプラセボ群と行った。主要エンドポイントは、1年あたりの重度喘息の増悪率とした。さらに介入12週目の気管支拡張薬前の予測1秒率、そして24週目の喘息コントロール質問票(ACQ-7-IA)のスコア、これら2つのベースラインからの変化を副次的エンドポイントとした。2型炎症性喘息の表現型(ベースライン時の血中好酸球数が150個/μL以上、または呼気中一酸化窒素濃度が20ppb以上)またはベースラインの血中好酸球数が300個/μL以上という2つの主要効果集団においてエンドポイントを評価した。
2型炎症性喘息の患者では、1年あたりの重度喘息増悪率は、Dupilumab群で0.31(95%信頼区間[CI]、0.22~0.42)、プラセボ群で0.75(95%CI、0.54~1.03)だった(Dupilumab群の相対リスク減少は、59.3%; 95%CI、39.5?72.6; P <0.001)。ppFEV1のベースラインからの(±SE)変化の平均は、Dupilumab群で10.5±1.0パーセント、プラセボ群で5.3±1.4パーセントだった(平均差、5.2パーセント; 95%CI、2.1~8.3; P <0.001)。ベースラインの好酸球数が300細胞/μLの患者でも、同様の結果が観察された。重篤な有害事象の発生率は、2つのグループで類似していた。
Dupilumabを追加投与することは中等度から重度の喘息でそのコントロールが難しい子供たちに肺機能の改善と良好な喘息のコントロールをもたらすと予測される。

2021年12月21日

症例検討会
80歳代女性 一人暮らしの方。自宅で転倒し訪問したケアマネージャーが発見し、当院に搬送されてきた。血液検査結果より貧血と慢性腎不全あり精査のため入院した。数回転倒したと思われたが本人からその詳細を聞き取ることができなかった。高次脳機能障害のスクリーニングで甲状腺機能低下症を認めた。エリスロポエチンの上昇を認めず、慢性腎不全および甲状腺機能低下症による貧血と考えた。

2021年12月17日抄読会

Assessment of Allergic and Anaphylactic Reactions to mRNA COVID-19 Vaccines With Confirmatory Testing in a US Regional Health System
JAMA Netw Open. 2021 Sep 1;4(9):e2125524
12月17日の抄読会では、PEG(ポリエチレングリコール)の医療的有用性や副作用に関して報告された。
PEGは医療上様々な場面で用いられている。例えば第8因子が欠如している血友病患者には第8因子を投与するが、第8因子にPEGを結合させると第8因子の半減期が延長することが知られている。
その他にもPEGには多くの利点があり様々な場面で用いられているが、PEGは時たまアレルギーを起こすことが知られている。
COVID19のワクチンにもPEG が含有されており、ワクチン接種の副作用にPEGが関与している可能性も考えられる。
PEGアレルギーにはIgMやIgGが関与していて、IgEは関与していないのが特徴である。
これまでの研究で、PEGアレルギーは女性や、NSAIDsなどへのアレルギーの既往がある人に好発することが明らかになってきた。男性に比べ女性の方が圧倒的にPEGアレルギーを起こしやすいのは、化粧品にはPEGが含まれており、既に多くの女性がPEGに感作されていることが原因なのかもしれない。
最後に余談ではあるが、かつて当院医師の担当患者さんにPEGアレルギーの方がいた。そこで薬剤部にPEGを含まない薬を問い合わせたところ、「PEGを含まない薬はほとんど存在しません。現代の医療を行う上でPEGを避けることはほぼ不可能です」との回答が返ってきたそうである。

2021年12月14日

症例検討会 2例
1 70歳代男性 既往歴高血圧 息苦しさのため近医を受診し、肺動脈血栓症、冠動脈疾患を疑われて当院を紹介された。造影CT検査で肺動脈に陰影欠損を認め血栓溶解療法を実施された。検査結果よりHb8.4、MCV低下より消化管出血の可能性を指摘されて精査を行い大腸腫瘍と診断された。
2 50歳代男性 発熱外来を受診した。CRP高値、白血球数増加などの炎症所見に加えてHb12.3、脾腫も認めた。全身検索の検査所見より両側副腎腫瘍の存在が明らかになったが、レボフロキサシンに明らかに反応し感染巣不明の細菌感染と考えた。副腎腫瘍はまだ診断されていない。

2021年12月10日抄読会

Empagliflozin in Heart Failure with a Preserved Ejection Fraction
N Engl J Med. 2021 Oct 14;385(16):1451-1461.
SGLT2阻害薬は元来、糖尿病治療薬として用いられていたが、心不全や腎不全にも効果があることが示唆され始めた.
今回の論文では、肥満の有無に関わらず、Empagliflozinが心不全の患者の心血管系死亡や入院のリスクを軽減することや、駆出率の保持に貢献することが示唆された.
すなわちSGLT2阻害薬は収縮不全だけでなく、拡張不全にも有効であることが示唆された.

2021年12月7日

症例検討会 1例
70代女性 -4y 貧血(Hb 8.7mg/dL)で受診。G-Bandingで5q-、5q欠損症候群と診断。レブラミド内服治療開始。
-3y Hb 12.0mg/dL。
-1y 再び貧血(Hb 7.1mg/dL)とともにPlt2.3×10^4/uLに減少。G-Bandingで染色体異常多数付加されていた。ビダーザ治療開始。イレウス、好中球減少性発熱併発。治療中断。

2021年12月3日抄読会

Association between Helicobacter suis infection and the pathogenesis of gastric mucosa-associated lymphoid tissue lymphoma
Hiroshima J. Med. Sci. Vol. 69, No. 2, 33~37, June, 2020

Helicobacter pylori陰性の胃MALTリンパ腫において、しばしば根絶治療が唯一の治療となるため、Helicobacter pylori以外のヘリコバクターが関与していることが示唆される。そのため今回の研究では、胃MALTリンパ腫患者におけるHelicobacter suisの陽性率を調査した。
Helicobacter pylori陰性の胃MALTリンパ腫患者15人がHelicobacter suisに感染しているか否かを調べたところ、3人(20%)が感染しており、Helicobacter suisが胃MALTリンパ腫の発症に関与している可能性が示唆された。

2021年11月30日

症例検討会
70代男性 貧血を検診で指摘されて受診。血液検査結果(上段)より長期間の失血による鉄欠乏性貧血が疑われた。上部消化管内視鏡検査で胃潰瘍と診断(2段)、治療開始したが-6年に大腸ポリープを指摘されて再検査を指示されたが忘れていたと話された。大腸内視鏡で-6年にadenomaと診断された隆起性病変(3段)が増大し(最下)adeno carcinomaと診断された。

gastric ulcer
上行結腸 -6年
上行結腸 0年

2021年11月26日抄読会

Myocarditis after BNT162b2 mRNA Vaccine against Covid-19 in Israel
N Engl J Med. 2021 Oct 6;NEJMoa2109730. doi: 10.1056/NEJMoa2109730. Online ahead of print.

2021年11月19日抄読会

Risk factors and mechanisms contributing to TKI-induced vascular events in patients with CML
Leuk Res. 2017 Aug;59:47-54.

2021年11月16日

症例検討会 1例
60歳代 BJPkappaタイプのmultiple myeloma。VD(ボルテゾミブ/デキサメタゾン)療法後増悪、VRd(ボルテゾミブ/レナリドミド/デキサメタゾン)➡メルファラン大量からPBSCT(-2年)➡IRd(ixazomib/レナリドミド/デキサメタゾン)実施後血球減少現れて受診。
腰椎に骨病変あり、骨髄に形質細胞25%、染色体解析 -17p。DCD療法(ダラツムマブ/カルフィルゾミブ/デキサメタゾン)実施。

2021年11月12日抄読会

Eosinophilic gastrointestinal diseases – Pathogenesis, diagnosis, and treatment
Allergol Int. 2019 Oct;68(4):420-429.

2021年10月29日抄読会

Eltrombopag Added to Standard Immunosuppression for Aplastic Anemia
N Engl J Med. 2017 Apr 20;376(16):1540-1550.

2021年11月9日

症例検討会 3例
1 20歳代男性 コロナワクチン接種後の胸痛で受診。コロナワクチン接種後3日経過胸部違和感出現し受診。接種側の頚部にリンパ節+ 下記のごとく筋肉系酵素上昇、ECGで四肢誘導、前胸部誘導全般にST上昇。ワクチン接種後の心筋炎に一致。対症療法にて軽快。

接種後3日経過ECG

接種後3日経過ECG

血液検査データ

血液検査データ

接種後4日

接種後4日

2 9月24日 case1 成熟のう胞性奇形腫

3 成人女性 大球性貧血精査中 約1年前に食思不振で受診。卵巣腫瘍と大球性貧血の関連について精査中。

卵巣腫瘍202111-1

卵巣腫瘍202111-1

2021年11月5日抄読会

Intranasal Oxytocin in Children and Adolescents with Autism Spectrum Disorder
N Engl J Med. 2021 Oct 14;385(16):1462-1473.

2021年11月2日

症例検討会2例

1 成人男性 労作性息切れと浮腫で受診。左鎖骨下にLN+。心臓超音波検査は正常。精査で脾腫+、左胸水+、腹水+、FDG-PETでSUVmax7.8。頚部リンパ節生検でt(14,18)を含む染色体異常あり。FLと診断。化学療法開始。

 

2 成人男性 左頚部リンパ節腫脹で紹介されて受診した。HBVAg+、HCVAb+。FDG-PETでシグナル強度の高いリンパ節を認めた。針生検で上皮性腫瘍の転移と診断した。

2021年10月26日

症例検討会 2例
1 80歳代男性 鉄剤無効の鉄欠乏性貧血で紹介。血液検査で小球性貧血を認め、LDH正常、ビリルビン正常、Cre正常、フェリチン低下、UIBC上昇。上部消化管内視鏡異常なし、鉄剤の経静脈的投与で貧血は改善した。
CTで膀胱に腫瘤を認め、細胞診でClassVだった。泌尿器科にて精査中。

2 80歳代男性 意識障害で救急搬送されて来院した。血液検査で、白血球数とCRPの高値を認めた。CTで左腎盂の拡張を認め、腎盂炎による菌血症とそれによるショックと診断したが、尿管の閉塞機転が明らかでなかった。泌尿器科にコンサルトして尿管ステントの挿入を依頼したところ、膀胱腫瘍、尿管浸潤と診断された。

2021年10月23日抄読会

Intranasal Oxytocin in Children and Adolescents with Autism Spectrum Disorder
N Engl J Med. 2021 Oct 14;385(16):1462-1473. doi: 10.1056/NEJMoa2103583.

2021年10月19日

症例検討会 2例
1 火傷 ガソリンを撒き野焼きをしようとして受傷。顔面3度 右上肢1/2 2度 体幹1/2 2度  Burn Index 10% 中等症
2 間質性肺炎 の1例

2021年10月15日抄読会

Gastrointestinal lesion in adult-onset Langerhans cell histiocytosis
Int J Clin Oncol. 2020 Nov;25(11):1945-1950
ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)は単球/マクロファージ細胞の1クローンが増殖し集積している(組織像的な)特徴をもつ稀な疾患で、ランゲルハンス細胞(LCs)と形態の解析でも免疫組織化学染色の解析でも似通った病態を呈する。しかしLCHは一般的にCD1a+/Langerin+LC-様の細胞の集団と定義され、この特徴を持つ細胞は何を起源とするかわかっていない。LCHは1-4歳の子供に見られることが多く、成人ではまれだ。さらには北ヨーロッパの白人に多い。このクローン細胞の増殖が1臓器に限られて自然に改善する患者から多臓器に浸潤し多臓器不全を示す患者までLCHの臨床像は多様である。その症状は多様であるが、発症の年齢、クローン細胞の増殖速度、細胞浸潤を示した臓器に応じている。クローンが浸潤することが多い臓器は骨、皮膚、肺である。LCHの病変はいかなる臓器にも起こりうるが胃腸に認めることは大変稀である。成人で胃腸だけに病変を認めた症例のレポートは散見されるが、多数の症例をまとめたものはほとんどない。そのため成人の胃腸のLCHのどれだけ発生しているか重要性はいかなるものかわからないままである。
成人LCHの日本人43例を対象として、その臓器、胃腸病変、および臨床経過を分析した。
13人の患者に内視鏡検査を行った。上部消化管内視鏡検査のみが5、下部消化管内視鏡検査のみが3、両方が5例だった。
胃病変(1例)、結腸病変(1例)、胃病変と直腸病変の両方(1例)が検出された。胃腸病変の3例は、非胃腸多系統LCH病変を示したが、胃腸症状はなくPET-CTで取り込みの増加も示さなかった。内視鏡検査では、小さなびらんを認めた。診断には病理組織学的検査が必要だった。これら3例は、ビンブラスチン/プレドニゾロン、メトトレキサート、および6-メルカプトプリンを含む化学療法で36週間治療された。2例は、臨床状態は治療後数年間安定していた。 1例は治療後1年7ヶ月で再発を示し、化学療法が再施行された。
胃腸のLCH病変は比較的小さく、臨床経過に影響は少なかった。